娘がしっかり、ゆっくり、こちらに戻ってこられるように
彼女の好きな音楽を流してから
声をかけて起こして
起きたところに おっとっととぶどうジュース
”長靴”という彼女のウキウキワードが弾みになって
「いく!」とすぐに返事がかえってきたのだった。
まったく知らない場所で目が覚めてしまったような
不思議な感覚、忘れがたい。
春分の日は やっぱりとってもパワーのある日だったのだろうか
その前夜、娘を寝かしつけて自分も布団にぽんと体を投げ
目を閉じたときに
ふっと1枚の画像(それは小さな頃から何度も見ていた映画の1コマ)が
浮かんで
あ、これはわたしだ とわかった
なんでそうなのか
これこれこういう理由でこうだ という道筋を全部飛び越えて
パン、とわかった
そして腑に落ちた
どうしてそうなのか
なんでそう感じたのか
探ろうとすると 言葉で説明しようとすると
澄んだ水が濁って見失う
それをそのまま そっと 手のひらで受けとる
そう、それも、そうでいいんだって(根拠を探して引っ掻き混ぜなくっていいんだって)
それがわかったのも 本当にここ数日のうちのことな気がしている。
そして、そうでいいんだって、心から納得がいったことが
スクリーンにメッセージを映す準備だったのかもしれない。
・
昨日の朝、目覚めた娘がお布団の中で
「こっちゃんは夢の中に入っていったの?」
「こっちゃんはここにいたの?」
と聞いてきた。
眠っている間のことって、不思議だよね。
どこか違う場所へ行っているんじゃないかって思う。
そして夢もまた、不思議。
そこに世界があるのだから。
夜にこっちゃんが眠っているのを、お母さんは見ていたけれど
お母さんも、本当の本当のことは、まだわからないし
わからないままきっと、終わるんだと思ってる。
不思議を分かち合う旅だ。
マスク解禁、となった時にふっと「口紅」と思って
自分には口紅をつける習慣がもともとないし、苦手意識もあったから
(口紅を買う人が、きっとたくさんいるだろうなぁ)と
すぐさま思考が、浮かんだアイデアを一般化した。
だけど、何度もふと浮かんでくるし
それはやっぱり、ひとのことではなく、わたしごとなのだった。
自分が、マスクを外した口もとに
色が欲しいなって思っている。
買い物の途中に薬局へ寄り、1本口紅を買った。
頭の自分はまだそれを(わかっていない)
でも心の方の自分が(口紅!)って呼んでいて
わたしは、そのわたしに、口紅を買ってあげたような
そんな買い物だった。
家に帰ってつけてみると
もともとつける習慣がないものだから
(塗った回数は、多分片手で数えきれる)
唇に色が塗ってある自分の顔がおもしろい。
だけど口紅を塗っている人をみて「へんなの」とは思わないわけだから
これはきっと、慣れの問題、と思って
つけたままにして、時々鏡を覗いてみる。
アイメイクは好きだから
この日も目元のメイクは朝からしていて
でも口紅を塗ると、目元と口元がバラバラなのがわかる。
それで、目元のメイクを少しオフしたりして
バランスを見た。
そんなことをしていたら、夜にはだいぶ見慣れてきた。
今朝は朝から口紅を塗ってみた。
なんだか顔がパッと明るくなる。
そしてちょっと今っぽくなる。
(人気だというKATEのリップモンスターという口紅だから、今の流行色なのだと思う。
名前もすごく面白くて、買ったのは04番”ゴーストムーン 0:00AM”という名前)
今っぽい、というのは
なんとなく ふわっと流れている空気に 少し体をのせるような
そんな軽さを運んでくる。そんな体感があった。
花粉症だからとマスクをつけたまましていた娘の送り迎えも
今朝からマスクを外してみる。
長かったなぁ、この3年間。
また笑ったくちもとで コミュニケーションとれるんだ。
冷蔵庫の中に、鶏ひき肉。
いつもはそぼろご飯にするけれど
なんだか違うものが食べたい、と思い餃子を作ることに。
鶏肉で餃子を作ったのは初めてだったけれど
やさしい味で美味しかった。
お肉と一緒に入れたのは、春キャベツと新玉ねぎのみじん切り。
それもあって、なんだか瑞々しい味になったのかもしれない。
娘が遊んでいる横で、餃子を包んでいく。
時々、娘が横にきて
お皿の中の、片栗粉を溶いた水を指でつついたりしていた。
夫も帰ってきて
みんなで美味しく餃子の晩ごはん。
娘もぱくぱくと食べてくれた。
包むのも楽しかったからまたやろう。
今度は海老餃子にしてみようかな、と思う。
ご飯のあと、娘がシルバニアファミリーで遊んでいて
私も参加すると
「こうして」「こうするの!」と厳しい指導が入る。
娘の指示していることがわからなかったから
「こう?」と聞くと、違ったみたいで、苛立って怒ってしまう。
「あなたの思っていること、お母さんや他の人にはわからないんだよ。
優しく教えて」
と言うと、娘は少し難しい顔をして黙ってしまった。
人形を手に持って「おしえてくれる?」と聞くと
「うん」と言って横にきて教えてくれた。
自分の心の中にあることが
世界中、自分にしか見えない
他の人にはわからないから
言葉をはじめ、いろんな手段で
伝えるんだってこと
娘はこれから覚えていくんだなと思う。
3月3日
娘を保育園へ送った後、晩のお吸い物にするために
台所ではまぐりの塩抜きの準備。
保育園の給食でも、ちらし寿司が出るらしい。
今日のうちに仕上げたい原稿がひとつあるので
少しずつまとめては、プリントアウトして
じっと見る。
画面で見ているのと
紙にのった文字を見ているのとでは
なんとなく言葉のまわりの空気の広がりが違って面白い。
画面で見る言葉も、こうしてパソコンを通じて言葉をうつのも好きだけど
やっぱり紙にのるのがいいな
言葉がのってる紙がもう、好きだな
と思う。
紙に並んだ言葉を眺めていると
ここにこのエピソードを入れるといいかも、とか
ここはいらなかったかも、というのがふっとふっと浮かんできて
紙面の上に見えてくる感じがする。
それは3次元の空間に出てきて
言葉が鳴っているからなのかな。